移ろいやすく変化のスピードが速いファッション業界において "スタンダード" と呼ばれるアイテムはいくつもあるが、40年以上憧れと尊敬を集め続けるブランドは滅多にない。ミリタリー・ワークウェアの時代を超えた実用性と、無限の可能性に魅了されたMassimo Osti（マッシモ・オスティ）による〈C.P. COMPANY（シーピー カンパニー）〉は、まさにそんなブランドだ。1971年にイタリア・ボローニャにて設立した〈Chester Perry（チェスター ペリー）〉が1978年に〈C.P. COMPANY（シーピー カンパニー）〉と名を変えて以来、同ブランドは数々の革新的な発明とアイデアを武器に、ファッショナブルでありながら時代を超えて着用できるウェアでこだわりの強い男女を魅了してきた。

3万点以上のミリタリーウェアのアーカイブを所有していたオスティは、1973年に色の深みや鮮やかさを際立たせるガーメントダイを理想的な技法で確立。他に類を見ない配色パターンと風合いで多くのファンを確立した。ちなみにブランド名の "C.P." は "Color of Passion" の頭文字。この名前に込められた想いは、揺るぎないコンセプトとして今も受け継がれている。

〈C.P. COMPANY〉は染色や素材の開発だけではなく、ファッションデザインにおいてもイノベーションを起こしてきた。ガスマスクからヒントを得たGOGGLE JACKET（ゴーグルジャケット）では、風雨からドライバーの目を守るゴーグルレンズと、時計を透かして見ることのできるレンズを左袖に装着。この奇想天外な発想は、オスティが思い描く「どのような冒険にもぴったりなジャケット」のビジョンを具現化したものだった。当時のカーレーサーにとっての必需品であった地図や水筒を簡単に収納できる多機能性も備えていたことで、絶大な支持を集めたという。このギミックは今も同ブランドのシグネチャーとして広く認知され、現代のファッションとしても成立していることは〈C.P. COMPANY〉ファンには説明不要だろう。

2005年にオスティが他界してからは後継者として様々なデザイナーが加入し、2010年代以降はブランドのヘリテージを大切にしながら近代化にも着手。クラシックでありながらモダン、カジュアルとラグジュアリーを自在に行き来するイタリアンブランドの雄として、機能と美しいデザインが自然に溶け込んだハイセンスなファッションを生み出し続けている。