想像を超えた独創的なデザインでファッション業界における確固たる地位を確立した〈Y/PROJECT（ワイ プロジェクト）〉は、2008年にフランスにてYohan Serfaty（ヨハン・セルファティ）が自身の名を冠してスタート。2010年に現ブランド名〈Y/PROJECT〉へと改名したものの、2013年に創業デザイナーの逝去という不幸に見舞われる。そんな中、後継に選ばれたのが現デザイナーであるGlenn Martens（グレン・マーティンス）だ。彼は多くの有名デザイナーを輩出し続けているアントワープ王立芸術アカデミー出身のデザイナーで、入学するのも困難、卒業するのは更に困難という学校を見事首席で卒業。ファッションデザイナーとして華々しい経歴と経験を持つグレンだが、先代が築き上げた独創性豊かな〈Y/PROJECT〉を引き継ぐことは容易ではなく、当初ディレクションを任された時は躊躇したという。さらにスタッフが喪に服した状況下でのディレクションは困難を極め、結果的に「グレンらしさ」が発揮されるまでに3年の月日を要することに。しかし「2017年 LVMH ヤング・デザイナー・プライズ」にノミネートされ、「ANDAMファッション・アワード」でグランプリを獲得したことをきっかけに世界中に認知され現在に至る。

ストリートのエネルギーとモード的なアバンギャルド、ダークで物憂げな雰囲気を持つ〈Y/PROJECT〉は、ジェンダーレスに着用できる点も特徴的だ。すべてのコレクションは奇抜なデザインとは裏腹に着る人の個性を延長させ、多様性や個々の感性を重視し、立体的なカッティングが施される。単純に「かっこいい・かわいい」というステレオタイプに収まらない構築的な造形は、グレンがアカデミー入学前に建築を学んでいた背景があるからだろう。多くのブランドが知名度が上がるにつれて商業的な方向性にシフトする中、大衆に媚びずに我が道を行くストイックな姿勢も〈Y/PROJECT〉の大きな魅力だ。
本稿ではメンズ・ウィメンズの両方にフォーカスを当てながら、〈Y/PROJECT〉の個性が光るデニムウェアを筆頭に紹介。構築的なモードデザインと唯一無二の個性を楽しもう。