ブランド解剖:TANAKA
ブランド解剖:TANAKA
「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」をコンセプトに、トラディショナルなデニムウェアをはじめとした様々なウェアをモダンな感性で作るユニセックスブランド〈タナカ〉の歴史とモノ作り、最新アイテムをフィーチャー
2017年にアメリカ・ニューヨークでタナカサヨリが立ち上げた〈TANAKA(タナカ)〉が大人気だ。クラシックなデニムジャケットやジーンズなどを独自の感性で再解釈し、モダンなアプローチで作り上げるコレクションは、瞬く間に完売してしまうアイテムも続出。デニムを得意とするブランドはすでに飽和状態と言えるほど世にあふれているのに、なぜ〈TANAKA〉はこれほど支持されるのか?ブランドの歴史を紐解きながら、実用的かつ高感度なデザイン性で違いを求める人々を夢中にさせる〈TANAKA〉の魅力を探る。
デザイナーのタナカサヨリは、東京モード学園アパレルファッションデザイン学科を卒業し〈Yohji Yamamoto(ヨウジ ヤマモト)〉で企画とニットカットソーデザイナーを経験。そのままモードファッションの道を突き進むかと思いきや、次の職場として「ファーストリテイリング」社を選び、〈UNIQLO(ユニクロ)〉の東京、上海、ニューヨークオフィスでウィメンズグローバルデザインチームのリーダーを務めるという多彩なキャリアを持つ。その後2017年に自身のブランドである〈TANAKA〉をニューヨークで設立。2020年にはタナカサヨリと同じく〈ユニクロ〉にてメンズグローバルデザインチームのリーダーを務めた経験を持つクボシタアキラがクリエイティブパートナーとして参画し、以降は2人体制でブランドを運営。ファッションブランドとしては小規模ながら、2022年には「Bergdorf Goodman(バーグドルフ・グッドマン)」から"FW2022 Radar Designer"に選出され、さらに"TOKYO FASHION AWARD 2023"を受賞。2023年3月18日(土)には「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 A/W」で初のランウェイショーを成功させるなど、新進気鋭のファッションブランドとして目覚ましい成長を遂げている。
多感な10代の頃に1990年代を過ごしたタナカサヨリは、当時盛り上がっていた裏原宿系ファッションやヴィンテージ、〈ヨウジ ヤマモト〉や〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉といったモードブランド、さらにはアントワープ・シックスをはじめとしたヨーロッパのファッションブランドに至るまで幅広く影響を受けたという。オーセンティックなワークやデニムウェアをベースにしながらハイファッション的なムードも漂っているのは、前述したキャリアはもちろん、学生時代に得た経験による部分も多いのかもしれない。
THE JEAN TROUSERS VINTAGE BLUE ¥37,400 TANAKA
THE JEAN TROUSERS VINTAGE BLUE ¥37,400 TANAKA
〈TANAKA〉のクリエイションのカギを握るのはデニム。100年以上前に誕生したクラシックなデニムウェアが持つ普遍的な良さは残しながら、身幅や着丈を細やかに調整したり、トラウザーのディテールやシルエットを採り入れるなど、現代的な目線で巧みにアレンジされている。素材は世界トップのクオリティを持つジャパンデニム、「カイハラ」の生地を使用。ややオンスが高く、穿き応えがありながら柔らかさも併せ持つプレミアムなデニムは、長く着用するとヴィンテージのような経年変化に進化していく。
そして、従来のデニムウェアをただ焼き直すのではなく、〈TANAKA〉らしいアレンジが加えられている点にも注目したい。例えばTHE JEAN TROUSERSは、ワイドレッグとやや深めの股上で体型を問わずバランス良く着られるスタイルにアップデート。通常チェーンステッチで縫われるウエスト部分をあえて本縫いにすることで腰回りをよりすっきりさせ、さらにトラウザーズに近いパターンで作ることで、穿いた時にもっとも美しく見えるよう計算して作られている。
THE BOOTS JEAN TROUSERS(MEN'S) ¥34,540 TANAKA
THE BOOTS JEAN TROUSERS(LADY'S) ¥34,540 TANAKA
オフホワイトカラーでコットン自体の風合いを楽しめるローホワイトシリーズからは、ボクシーなシルエットのデニムジャケットとさり気なくセルビッチのラインを外側に出したジーントラウザーズがおすすめ。インディゴブルーとは異なる清廉さを持つ無染色・無脱色のデニムは、いつものコーディネートの幅を広げてくれるはず。
品のある色落ちで大人っぽく穿けるブーツカットは、ヴィンテージ直球ではなくごくさり気ない加工が大人の装いにしっくりとハマる。メンズ・レディースともに裾は大胆にカットオフ。濃淡と立体的なアタリがもたらすコントラストを楽しもう。
NEW CLASSIC JEAN JACKET ¥54,450 TANAKA
THE JEAN TROUSERS ¥37,400 TANAKA
アイテムによっては職人が1点1点を手作業でペイントを施したり、奄美大島の伝統工芸である泥染め・天然染めを採用するなど、ニューヨーク発のブランドでありながら日本の伝統と職人技を駆使する〈TANAKA〉。素材自体を活かしたもの、素材の良さを活かしながらひと手間加えたもの、どちらにも日本人が深く共感できる抑えた美と詫び寂びが宿っている。「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 A/W」ではロングコートやダウンジャケット、バーシティジャケット、ニットなど様々なウェアがお披露目されたほか、定番のデニムウェアもグラフィカルなアプローチのデザインが登場するなど、今後の展開もますます楽しみだ。また、リサイクルコットンを使用したり多くのアイテムをユニセックス展開にするなど、サステナビリティとダイバーシティを自然な形で体現するブランドとも言えるだろう。〈TANAKA〉が掲げる「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」というコンセプトは、モノ作りの上流から下流に至るまで淀みなく貫かれている。
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TANAKA
NEW CLASSIC JEAN JACKET RAW WHITE
販売終了