ブランド解剖:WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH

WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH

ブランド解剖:WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH

ビーチライフのDIY的精神でライフスタイルとファッションを繋げるブランド、〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉に迫る

アメリカ・カリフォルニア州のローカルなビーチエリアで誕生し、西海岸近郊でカルト的な人気を集める〈WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH(ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ)〉が、独自のポジションを確立しつつある。2020年のブランド発足から間もなく、本国アメリカでは発売と同時に完売するアイテムが出るほどの人気を獲得していたが、ここ日本でもいよいよその熱気が広がってきた。先日ローンチされた2023年春夏コレクションにおいても、アイテムによっては早くも売り切れたカラーがある。それでも、このブランドのことを詳しく知る人はまだ少ない。サーファーに向けたブランドなのか?新手のストリートブランドなのか?本稿ではファンから〈WHR〉の呼び名で親しまれる〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉について詳しく掘り下げる。

WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2023 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2023 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2023 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2023 Spring Summer
〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉は2020年に設立。当初はカリフォルニア・ニューポートビーチのサーファー、Pat Towersey(パット・タワジー)が2017年に実験的に始めた、ごく個人的なプロジェクトだった。生まれも育ちも生粋のカリフォルニアであるパット・タワジーにとって、DIY的なアプローチでモノ作りを行うことはごく自然な成り行きだったと言えるだろう。ところが、設立後間もなく友人である現代アーティストの Tom Sachs(トム・サックス)からのアドバイスにより、様々な人々にビーチライフを楽しんでもらうためのブランドとして動き出すことに。パット自身のライフスタイルであるサーフカルチャーからインスパイアされたコレクションは、始めは周囲の友人たち、次第にカリフォルニア近郊に住む違いを求める人々、そして「DOVER STREET MARKET(ドーバー ストリート マーケット)」のような高感度なショップにまで広がっていく。
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2023 Spring Summer
ファーストコレクションでは、定番的存在であるキャップやTシャツ、フーディーといったカジュアルファッションに必要不可欠のアイテムから、今すぐプロサーファーが使用できるサーフボードやシュノーケルまで幅広く登場した。こういった変わり種も当たり前のように制作する理由は、〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉の根幹に「Beach Utiliry(ビーチで使う道具)」というコンセプトがあるから。独創的で機能的なアイテムの裏には海や自然界への愛情とオマージュがあり、様々な人々にビーチライフを知って楽しんでほしいという思いが込められている。
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2021 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2021 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2021 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2021 Spring Summer
そんな〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉の記念すべき日本初上陸は、「伊勢丹新宿店」にて2020年に開催された「Tom Sachs: Retail Experience(トム・サックス:店舗体験)」だった。トム・サックス自身がデザインした展示会場では、椅子やテーブル、チェスセットといったありふれたものにアート的解釈を施した作品が並び、同じ空間に〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉のファーストコレクションを展示。パット・タワジーとトム・サックスが友人同士であることがきっかけとはいえ、現代アートを代表するキーパーソンの展示会でデビューを飾ったことは、その後のブランドの勢いを加速させたと言っていいだろう。
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Spring Summer
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
2022年春夏~秋冬コレクションでは、海や水からインスピレーションを得た新しいグラフィックを積極的に反映。珊瑚やイルカ、飛び立つ鳥、チェーンステッチで再現したクジラなど、自然界に存在する動植物を独特のタッチで描いたデザインでクリエイティブ的な幅を広げている。また、毎回ファンを驚かせるLOOKにも注目したい。ウェットスーツに身を包んだ男女、マリンスポーツを楽しむための道具がぎっしり詰まったガレージでくつろぐ姿、パットの地元であるカリフォルニアのビーチでサーフィンを楽しむ様子まで、どれを見ても一般的なファッションブランドとは明らかに異なるアプローチが試されていることが分かるはずだ。これらの実験的とも言える表現方法からも、〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉が海や自然環境から影響を受けたライフスタイルを推進していることが見受けられる。
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
WESTERN HYDRODYNAMIC RESEARCH 2022 Autumn Winter
そして、2023年春夏コレクションではオーバル型の新しいロゴが発表されるとともに、〈WHR〉のファンにとって親しみ深いデザインが登場した。いずれもこれまでと同様に海や水といった大自然や、ビーチライフのDIY的精神を共通言語とするレイドバックした生活を謳歌するものだ。アイコニックなロゴを刺繍したキャップやウェア類はデザインやカラーのバリエーションを増やし、気分によって使い分けたいという要望に応えてくれる。海のアクティビティを楽しんだ後でも、大都市で過ごす休日でも、あなたが選んだお気に入りのアイテムは完璧に馴染んでくれるだろう。ライフスタイルとモノの間にある距離感を独自の手法で縮める〈ウエスタン ハイドロダイナミック リサーチ〉は、自分らしさを表現したいと願うコアなファンを増やし続けている。