THE STORY BEHIND with Akira Maruyama

 

2021.07.16(Fri.) | Photography:Genki Nishikawa(MILD inc.) Styling:Akira Maruyama(model) Hair & Make-up:Mikio Aizawa(model) Edit & Text:Shingo Sano

SPECIAL FEATURE「STYLE ON THE EDGE」
アフタートーク

スタイリスト 丸山晃 × エディター 佐野慎悟

TCS Journalにて展開しているエクスクルーシブなエディトリアルコンテンツ「THE EDGE」で、人気スタイリストがディレクションを手がけるスペシャルファッションストーリー「STYLE ON THE EDGE」。ここではそのストーリーの裏側にあるコンセプトや、スタイリング、トレンド、フィーチャーしたブランドなどについて、ディレクションを手掛けた本人を招いて深堀りしていきます。

佐野 :春夏シーズンもだいぶ佳境に入ってきたここ最近。TATRAS CONCEPT STOREの店頭も夏本番といった印象です。今回の「STYLE ON THE EDGE」では、Tシャツやシャツなど、軽いアイテム一つでも深みのある人間像を作り込むことができる、スタイリストの丸山晃さんにディレクションをお願いしました。僕はもともと、10代から20代の前半は、パンクの音楽やファッションにかなり影響を受けて育ちましたが、僕の中で丸山さんは、パンクやロックスタイルを知り尽くした兄貴的存在。今店頭にあるアイテムでどんなストーリーを展開してくれるのか、どんなスタッフィングでそれを表現してくれるのか、かなりワクワクさせていただいていました。

丸山 :今回、いろいろ考えてみたんですが、Tシャツやシャツみたいに性別に囚われないアイテムがメインになってくるので、モデルのジェンダーもニュートラルに表現してみようと思ったんですよね。だから前からインスタを見て気になっていた、レカちゃんというモデルを一本釣りでブッキングしてもらいました。ほぼほぼメンズのアイテムを使うんですが、それをあえてメンズライクな女性に着こなしてもらう感じが、結構スリルのあるイメージに仕上がっていると思います。

佐野 :いや、僕もインスタ見させていただきましたが、かなり打ち出し強いですよね。ちょっと「ドラゴン・タトゥーの女」みたいな感じで、若干ビビりながらDMしてみたら、快くOKしてくれて(笑)。でも関西をベースに活動している方なので、撮影当日は代々木のスタジオまで遥々往復7時間! わがまま言って、日帰りで来てもらっちゃいました(レカちゃんありがとう!)。

丸山 :本当、彼女カッコ良かったですよね。来てもらえてよかったぁ。むしろ男性のモデルに着せるよりも硬派な感じに仕上がったと思いますよ。

佐野 :僕は雑誌でも頻繁にジェンダーレスだったり、男女で同じアイテムをシェアするシェアードファッションの提案をしていたりするんですが、個人的にも今被っている帽子とか、時計とか、他にもTシャツやパーカなんかは、妻と共用で使っているアイテムも多かったりします。

丸山 :僕も数年前までは、よくウィメンズのアイテムを着たりしていましたよ。でも歳を取るにつれガタイがよくなってきて(笑)。全然着れなくなっちゃったよね。女性が男性物を選ぶのも、ジェンダーレス云々が言われる前から自然にやられていること。特にミリタリー物は、ウィメンズだと女性っぽくアレンジされた物が多いから、本物のメンズの方がやっぱりカッコ良かったりするんですよね。

佐野 :では、メンズアイテムで硬派に決めたレカの着こなし、一つずつ解説をお願いします。

LOOK1

佐野 :まずはダメージ加工を施したオーバーサイズのスウェットですが、これ「メゾン・マルジェラ」なんですね。パンツは「タトラス」で、かなりルーズなシルエットをワントーンで表現されました。あと、丸山さんの私物で合わせた「ドクター・マーチン」のブーツも、レカのパンキッシュなイメージとあいまってカワイかったですね。

丸山 :結果的にはパンキッシュに仕上下ていますが、ルーズなアイテムにルーズなアイテムを合わせるこの感じは、90年代のヒップホップを再解釈していくイメージもありました。あの頃の足下は「ティンバーランド」だったけど。井上三太の「TOKYO TRIBE」とか、佐野くんも世代でしょ?

佐野 :うぉ!「TOKYO TRIBE」! 懐かしい! 「SARU」のTシャツっすよね(笑)。

丸山 :そうそう。でもグラフィックなどの柄物を使わずに、しかも全アイテムをワントーンでまとめたことで、今っぽくまとまっていると思います。レカでダークな感じのスタイリングっていうのはすぐにイメージできるけど、オールホワイトっていうのも、逆に狂気を感じてカッコよかったり。

LOOK2

 
 

佐野 :次は結構スポーティで爽やかなスタイリングですね。これはどのアイテムも性別を選ばないし、スタイル的にもかなりジェンダーレスです。

丸山 :めちゃくちゃ長いスウェットパンツをクッションたっぷりで履く感じが今っぽいですよね。数年前は「Y-3」みたいなリブパンツが主流だったけど、最近はこういうスリットが入ったタイプとか、ズドンと落ちるストレートとか、フレアなんかも増えていますよね。多分「グッチ」のレトロなトラックパンツが流行った流れもあると思います。Tシャツにスウェットパンツというシンプルなスタイリングだからこそ、シルエットの新しさが目立ちます。

佐野 :今回はメンズアイテムを女性が着ているから、シルエット感も余計に強調されましたね。スリットからのぞくスーパースターも、男心くすぐりますね。

LOOK3

 
 

佐野 :このルックは、レカらしさと丸山さんらしさがいい具合にマリアージュしてますよね。当日はこれから撮影しましたが、フォトグラファーの西川さんが最初のシャッターを切った瞬間から、完全に世界観が出来上がった感じがして、「もう今日の仕事は終わり」感が凄かったです(笑)。

丸山 :「リック・オウエンス・ダークシャドウ」のパーカとパンツを使っていますが、このブランドは正直、それだけで十分に世界観が完結するブランドなんです。でもあえて、私物のハーネスを着けてパンキッシュに仕上げました。アイテムの形はベーシックでも、袖口や裾から垂れるリボンとか、シルエットとか、細かいディテールがスタイリングした時に効いてくるんですよね。アイテム的には、スニーカーとルーズに合わせるストリートっぽい雰囲気でもまとまりやすいんですが、僕はボリューム感のあるブーツを合わせる感じが好きですね。ハーネスも含め、ちょっとした違和感というか、ノイズが混じる感じがかっこいいんです。

佐野 :うまくまとまりすぎるとちょっと退屈というか、面白さが足りない感じはしますよね。それはファッションもそうだし、音楽もそうだし。ノイズとか、不協和音とか、そういう違和感がある方が、確かに強く印象に残ったりします。

丸山 :それにしても、このヒラヒラ揺れるリボン、かなりアクセントになっていますよね。パーカとハーフパンツっていうベーシックなアイテムでも、十分に存在感のある印象にしてくれています。

LOOK4

 
 

丸山 :もうこれは、レカの私物か? ってぐらい、完全にハマったスタイリングでした(笑)。ハーフパンツの上にタイトなトップスを合わせるのは、結構僕の中では定番ですね。最近は特にオーバーサイズなアイテムが多いから、なんでもルーズに行きがちだけど、こういうメリハリのあるシルエット感にした方が、よりストリートモードなイメージに仕上がりますよね。

佐野 :靴は「ナイキ」SFBのブーツで、ミリタリーっぽくまとめていましたね。トップスのカットにもミリタリー感があり、女性の魅力と男性っぽい魅力の両方が活きたスタイリングでした。

LOOK5

 
 

佐野 :それにしても、ミキオさんのヘアメイクもかなり気合入ってましたね。パンクなんだけど、どこかナチュラルな感じで、これまでに見たことがない斬新なスタイルでした。

丸山 :大御所ヘアアーティストの写真集にありそうな感じでしたよね。今回はジェンダーレスな感じにしたかったから、基本的にノーメイクの雰囲気を活かしてもらったけど、ヘアも根元のダークな部分がすごく効いていてカッコよかった。

佐野 :この「タトラス」の開襟シャツは前回の「WHAT'S IN?」でも取り上げていますが、丸山さんもこういうシャツは好物じゃないですか? 夏場の丸山さんは、こんなイメージです。

丸山 :そうそう(笑)。夏はそれこそアロハ三昧ですよ。めちゃくちゃ着ます。コットンシャツだとちょっと肌触りが硬いから、こういうレーヨンとかシルクとか、テロっとした抜け感のある素材を選ぶようにしています。

佐野 :このルックはそれこそ、リネン風のシャリ感のある素材のタックパンツを合わせて、ビーチリゾートでも心地良さそうなスタイルですよね。

丸山 :ウエストにギャザーのあるショートパンツと、タックパンツをパンツ・オン・パンツでレイヤードすることによって、ウエスト周りにリッチな表情が生まれます。中には海パンを合わせるイメージで。そこにタンクトップと、柄シャツをチンピラっぽく軽く羽織る感じで。

佐野 :いいっすね~! ビールが止まらないっすね~! 梅雨が明けたら、海辺でも河原でも山でも、開放的なところで思いっきり夏の遊びを満喫したくなりました。やっぱりファッションって、外に出て楽しいことをするモチベーションをアゲてくれるから、こんなご時世だからこそ、「あんな服着たい」とか「あんな格好したい」って、いろいろ妄想してみるのもアリですね。