新しいスタンダードを生み出す構築的バッグ

アートのような佇まいが目を引く【52 BY HIKARUMATSUMURA】のバッグシリーズ「Miss ROBOT」。「体験をデザインすることで21世紀的な新しいモノづくりのシステムを模索したい」と語るデザイナーの松村さんに、ブランドコンセプトやデザインに込められた想い、そしてこれからのことを伺いました。

きっかけは、人の美意識の変化に興味をもったこと

【BAO BAO ISSEY MIYAKE】や【HIKARUMATSUMURA THE UNIQUE-BAG】など数々の人気プロダクトを手掛けてきたデザイナーの松村さん。【52 BY HIKARUMATSUMURA】で2019年にデビュー。

松村氏:子供の頃から絵を描くのが好きでした。車や服も好きで最初は「えっ! 」とビックリするようなデザインでもそれが段々気になり、欲しいと思うようになる、といった人の美意識の変化そのものに興味をもつように。つまりデザインで「新しい価値」を生み出すことができると思ったわけです。それがデザイナーになったきっかけであり、長年デザインをしている理由でもあります。

他のブランドとは違うアプローチで
新しいプロダクトを生み出すための実験を

デザイン会社【52DESIGN】を立ち上げたきっかけを教えて下さい。

松村氏:元々、2009年に自身のデザイン事務所を立ち上げて以来、クライアントワークを中心に仕事をしてきました。ただ、デザインの仕事だけでは自分がデザインしたプロダクトとユーザーとの直接的な接点がないことに長年歯がゆさを感じていました。そこで企画製造販売までを一括してできる会社【52DESIGN】を共同で立ち上げました。テーマは、他のブランドがやっていない新しいことにトライすること。これからのプロダクトに必要なのは、どのような方法で製造し、それをどうストックして、どう販売するか。更にお客様が買った後にどう使いどう保管しどう長くつきあえるかなど。モノが生まれ、使い古されるまでの時間をデザインしたいと考えています。
今、挑戦している「Miss ROBOT」はユーザーと時間と体験を共有するという最初の実験。今後も色々な実験をしていく予定です。

20世紀が生み出した人類の財産“樹脂”を使って21世紀の生活になじむデザインを

ブランドのアイコン的存在のPVC素材を使ったバッグ「Miss ROBOT」。どんな想いで生まれたのでしょうか?

松村氏:まず、「Miss ROBOT」で重要なのは、モジュール(四角いピース)を組み合わせて作るというシステムです。従来のミシンで縫製するという職人技ではなく、他社には真似のできない独自の組立方法を開発しました。
そういう意味では、(今も一部やっていますが)素材は革や合皮、ナイロンなど通常バッグに使われている素材に置き換えることが可能です。
今回は素材に対するこだわりがありました。今は温暖化やサスティナビリティーの観点から、大量廃棄されるプラスティックをどう減らすかは重要なテーマです。
そのことでプラスティックそのものが悪者になりがちな風潮には誤解もあります。僕はPVCを含む樹脂(プラスティック)の加工技術は、20世紀が生み出した人類の財産だと考えています。家電や携帯などもそうですがプラスティックなしでは現代生活は成り立ちませんよね? 時計の針を逆に回して、100年前に戻れば、当然サスティナブルな生活はできますが、前へ進みたいという想いがあります。今後は少しずつリサイクル素材や、原料が石油ではないものを使いながら、まずは捨てられづらいプロダクトを作る仕組みを考えることで、21世紀的なモノづくりの方法論を模索したいと思っています。

買った後も色々楽しみが広がる
「アップデータブルバッグ」

松村氏:「Miss ROBOT」での新たな試みは「アップデータブルバッグ」というコンセプトです。買って終わりではなく、買った後からも楽しみが広がること。同じ定番アイテムでも少しずつディティールがアップデートしていて、例えば「ASTERISK」なら口元の仕様やハンドルなど、すでに持っている商品を直営店に持ち込んでくだされば後からでもアップデートできるというシステムです。今後の展開としては、機能だけではなく底のパーツの色を変えられるなど、ずっとワクワクが続くような捨てられないシステムを日々試行錯誤しながら実験していこうと思っています。

攻めのデザインでありながら、
日常にフィットした「ASTERISK」と「POCKET」

松村氏:ASTERISK(アスタリスク)はこの四角いPVCのパーツを使って、平面的ではなく、立体的な美しいオブジェをどう作るかがテーマでした。日本の昔からある巾着袋のシステムを応用し手を動かしながら、ピースを組んでいくことで偶然生み出されました。

松村氏:トレンドアイテムでもある携帯ショルダーのPOCKET。ミニマルな四角をモチーフにしたエントリーライン。より軽量化している現代の生活にフィットしスマートフォンや小物が入るユーティリティバッグです。

"テクノロジーに頼らず、日常生活に革命を起こす"をテーマにデザインしていきたい

「Miss ROBOT」のバッグの他にどんなデザインをされているのでしょうか?

松村氏:「Miss ROBOT」のシステムを使ってバッグ以外のアイテムに広げていきたいというのが1つあります。直営店ではカウンターやランプシェードなどを実験的に作って展示をしています。他にも、カプセルピンチというカプセルの重さで物を挟む道具も販売しています。空間に物を置く感覚を体験する道具です。
実験しているうちに、自然と日常に馴染むようなモノを作っていきたいですね。

「モノを通して体験してもらう」ことに挑戦していけたら

今後の展望やどんな実験に挑戦していきたいと考えていますか?

松村氏:時代の流れはどんどんバーチャルになっていると思います。便利さという観点では、実体験よりもバーチャルのほうが便利ですが、それが普及すればするほど、実際に触れてみたいという人間の欲求は膨らんでいくと思うんですよね。そしてバーチャルで済むものは淘汰されていき、体験がキーワードになると思っています。だから「モノを通して何を体験してもらうか」ということが重要です。カプセルピンチもそうですが、今後はライフプロダクト全般に広げていきたいと考えています。一見奇抜なデザインが意識の変化で段々日常に溶け込んでいくような、新しいスタンダードを作っていきたいと思っています。

印象に残ったのは、世の中の半歩先を見据えたモノづくりの理論。常に先を考えたデザインやシステムを生み出す実験に、ワクワクするようなモノづくりの明るい未来を感じます。

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Text by AYAKO AJISAWA