THE STORY BEHIND with Masayuki Sakurai

 

2021.02.04(Thu.) | Photography by Masaya Takagi Styling by Masayuki Sakurai Hair & Make-up by Go Utsugi(model) Edit & Text by Shingo Sano

SPECIAL FEATURE「STYLE ON THE EDGE」
アフタートーク

スタイリスト 櫻井賢之 × エディター 佐野慎悟

TCS Journalにて展開しているエクスクルーシブなエディトリアルコンテンツ「THE EDGE」で、人気スタイリストがディレクションを手がけるスペシャルファッションストーリー「STYLE ON THE EDGE」。ここではそのストーリーの裏側にあるコンセプトや、スタイリング、トレンド、フィーチャーしたブランドなどについて、ディレクションを手掛けた本人を招いて深堀りしていきます。

佐野 :撮影、お疲れさまでした! 今回は「STYLE ON THE EDGE」の記念すべき第一回ということで、「THE男子会」でもご活躍中の櫻井さんにディレクションをお願いさせていただいたわけですが、雑誌で使うようなコレクションピースではなく、TATRAS CONCEPT STOREで展開されているリアルな商品をスタイリングしてみて、実際どうでしたか?

櫻井 :TATRAS CONCEPT STOREはハイブランドからストリートブランドまで、前衛的なモードから機能性に特化したテック系アクティブウェアまで、いまのファッションがジャンルを跨いで幅広く集約された、いわば時代を写す鏡のようなお店なので、あえて捻ったりせずに、直球でこの店らしさを表現してみました。

佐野 :そうですよね。一般的なファッション誌だと、そもそも毛色が違うブランドをごちゃ混ぜにして見せることがあまりないですし、ランウェイで発表されたルックのまま紹介することも多いですが、実際に僕たちが毎日着ているのは、ラグジュアリーなハイブランドもあれば、バチバチに尖ったストリートブランドや古着もあるし、むしろ雑多に並んでいた方がリアルだったりしますよね。

櫻井 :さらに今はノーボーダーの時代。世界全体がダイバーシティを求めている中で、ファッションも当然例に漏れません。これまでにあった、ジャンルの区別や着こなしのルールみたいなものは、どんどん意味をなさなくなっています。いい物を自由にミックスできるインクルーシブ(包括的)なファッションの方が、圧倒的に今の時代感にもあっています。まさに今回は、TATRAS CONCEPT SOTREからもそんなメッセージを受け取った気がして、それをそのまま形にするイメージでディレクションしました。

佐野 :だから街の風景から世界観が固定されてしまうロケ撮影じゃなくて、どんな絵の具も乗せられるような真っ白なスタジオを選ばれたんですね。じゃあ、最初のルックから見ていきましょう。

LOOK1

 
 

佐野 :メインアイテムのジャケット、パーカ、パンツはすべて「タトラス」と「ライオットヒル」のコラボアイテムですね。この「ライオットヒル」ってブランドはどんなブランドなんですか?

櫻井 :僕もTATRAS CONCEPT STOREで初めて見つけたブランドなんですが、人気歌手The Weekendのツアー衣装も手掛けているLAの新進気鋭のブランドで、ミリタリーやタクティカル系のディテールが非常にうまくて、トレンド感もあってとても勢いを感じています。このブランドのデザイナーであるジョーダン・フレッシャーをタトラスが全面的にバックアップする形で、彼が思い描いた物を形にしたのがこのコラボコレクションみたいです。

佐野 :確かに。かなりステージ映えしそうなデザインですし、今っぽいウェアラブルバッグの要素を、ミリタリーの解釈でリアルに落とし込んでいるあたりがうまいですね。でもそこにコンバットブーツじゃなくて「メゾン マルジェラ」を合わせる感じ、かなり新鮮で、やられました。やっぱりシューズを変えるだけでも、ジャンルを超えてミックスすると、それだけで個性が生まれますね。

LOOK2

 
 

佐野 :次は「ア コールド ウォール」のコートがメインのルックですが、このブランド、どんどん進化していますよね。ストリートカルチャーから出てきたブランドですが、ただの流行りのブランドに留まらず、ちゃんとファッションブランドとしての奥行きがあって、デザインのクオリティも日に日に上がっているイメージです。

櫻井 :そうですよね。このレーザーカットのコートとか、かなりミニマルだけど、すごくらしさを感じさせながら、ストリートっていうよりもモードなファッションとして成立していますよね。ブランドとしてだいぶ成熟してきたイメージがあります。だからスウェットパンツ一本を見ても、カラーチョイスや立体裁断のシルエットがとても上品。ディテールにもかなりこだわっています。そのコートに合わせたのが、プリマロフトの中綿を採用した「エイチアイピー バイ ソリード」のブルゾンです。これはリバーシブルな上にスリーブも取り外し可能で、インナーとしてもアウターとしても重宝するアイテム。結局はこういうアイテムが一番使えます。

佐野 :ここでもマルジェラのブーツが効いていますよね。こんな系統の服にはハイテク系のスニーカーとかを合わせがちですが、まんまじゃ面白くないですもんね。結局トレンドトレンドって言っても、他人と同じじゃ絶対いやだし、それをどう自分なりに咀嚼して吸収するか、そこがやっぱりファッションの面白さですよね。

LOOK3

 
 

佐野 :このルックではマルジェラのデニムジャケットをメインに、「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス」のフーディと、「ミスター サタデー」のパンツでスタイリングしています。フーディとパンツが醸すストリート系の世界観だけだと、正直20代には良くても大人にはリアルじゃないかもしれません。でもここにモードな雰囲気のデニムジャケットが一着入るだけで、断然取り入れやすくなりますね。

櫻井 :個性の強いブランド同士でも、アイテムを選んでスタイリングすれば、意外とうまく調和してくれるんですよね。しかもこのパンツに施されたコラージュワークを見ると、明らかにパンクカルチャーを通ってきた匂いがするし、合わせたシューズも「クラークス」のワラビーだし、大人世代も素直にグッとくるはず。今のデザインを選ぶことで、ちゃんとスタイルをアップデートしていくことも重要です。

LOOK4

 
 

佐野 :このア コールド ウォールのスタイリングは、割と初期っぽいというか、ブランドらしさがそのまま表現されていますね。

櫻井 :やっぱりこういうレイヤードルックが、ここのアイデンティティですよね。ブルゾンの上にベストを着ることで生まれる変則的なシルエットは、ぱっと見で面白いしかっこいいですよね。ここでは素直に同じ系統の「ワイスリー」のスニーカーを合わせていますが、黒とベージュ系のバイカラーでスタイリングを統一してみると、ただのストリートルックとは差別化できて、大分ブラッシュアップされた印象になります。

LOOK5

 
 

佐野 :最後のルックは、チルドレンのモッズコートとバンダナシャツがメインです。モッズコートもシャツもインパクトがあるから、インナーとパンツはシンプルに削ぎ落としていますね。

櫻井 :モッズコートは軍物をアップサイクルした物。この古いものに手を加えて、まったく新しい価値を生み出すというアップサイクルも、近年どんどん盛り上がっているコンセプトの一つ。ただの古着を着るんじゃなくて、現代の価値観にアップデートされたアイテムを選ぶことで、スタイリングに新鮮さが加わります。インナーに合わせた「シーグリーン」のビッグワッフルプルオーバーは、個人的にも愛用しているアイテムです。肌触りが良くて見た目も上品なので、部屋着としても重宝しています。「77サーカ」のデニムパンツは、シンプルなんだけどなかなか一筋縄じゃいかないシルエットで、かなりしっかり作り込んでいる印象です。このストレートのクロップ感が絶妙で、デニム好きでもハマりそうですよね。

佐野 :櫻井さん、ありがとうございました。「ファッションは楽しい」っていう素直な気持ち。忘れちゃいけないですよね。「これはこう合わせなきゃ」とか、「こういうスタイルにはこういうブランドを」とか、難しく考えずに、直感を信じて自分がいいと思った物を素直に組み合わせると、他の人には出せない個性が出せるんだって勉強になりました。でもただ素人が好き勝手にやればいいのかって、そんなに簡単な話でもないと思うので、しっかりとアイテムがセレクトされていて、かつ自分と波長が合うショップがあるっていうのは、かなり大きいですね。ちょっとご時世的にも最近あまり買い物に行けていないので、今度行く時には、思いっきり自分勝手にスタイリングしてやろうって、楽しみになりました。