AKIRANAKAが
今、社会に提案したい
〝リアル〟

ここは東京なの?と思ってしまうほど、緑豊かな羽根木エリアにAKIRANAKAのデザインオフィスはある。
6年前に三重県からこの地に拠点を移し、ブランドとしても今年10周年を迎える。
30年後も50年後も100年後も続いていくブランドに成長させていきたいと語るデザイナーナカアキラさんに、今季のコレクションのことはもちろん、ブランドのこと、プライベートなことまでお話をお伺いしました。

2020AWに掲げるテーマは
〝狂気とエレガンス〟

今シーズンは、パリのジョルジュ・ポンピドゥ国立近代美術館でのフランシス・ベーコン回顧展に衝撃を受け、ベーコンの作品からインスピレーションを得たコレクションに。もともとアートや建築などを見るのが好きで、回顧展にも足を運んだのだとか。 「ベーコンの作品はNYでも一度見たことがありましたが、なんというか、落としどころのない感情になるんです。ベーコンの作品は切り裂かれたまま展示されているものや、叫んでいる様な表情を描写したもの、流血を描いたものなど、主題もなかなか独特。 一見グロテスクに思えるものも、よく見るとその中にちゃんと美学がある。まさに今季のテーマとなっている〝狂気とエレガンス〟が共存しているんですよね。それをファッションでも表現できないかと思ったのがきっかけです」。

シーズンテーマは明快に。
アントワープ時代から
やり方はずっと一緒です。

ほとんど外注をせずに、パターンを起こすのも、トワルチェックもすべてこのアトリエで行なっているというAKIRANAKA のクリエイション。 リーダーとしてナカアキラ氏がビジョンを打ち出し、デザインチーム、パターンチーム、生産チームが応える。そこでなくてはならいのが、アントワープ時代からずっと続けているという、テーマとなる写真などを集めたコラージュだ。
チーム制だからこそ、しっかりとしたテーマを掲げ、それをブレずにみんなで共有できるものが必要なのだとか。

「ベーコンは既存の見た目に美しさを感じるのではなく、その人やそのものの中、そこから醸し出す空気に、本来の姿があると思っていました。それを浮き出して描くために、題材とする写真をあえてグシャグシャにしたり、破いてから切り貼りをしたりしていました。
だから僕たちも今回はベーコンと同じアプローチを試すため、キレイだと思うビジュアルをあえて切ってアートワークにしたり、古着のジャケットを切って縫い合わせたりしてみました。そういう工程を通して、ひとつひとつのアイテムを作り上げていきました」。

チームで高め合うからこそ。
予想を超えたモノづくりを大切に。

まずデザインチームが絵を描き、それをパターンチームが具現化していく。「パターンチームには、デザイン画通りのものを作るなとよく言っています。絵に落とし込まれたものは、デザインチームの頭の中ですでに見えているもの。そこをどう超えていくかが大事なんだと」。 その逆もしかりとか。パターンチームがどうにか実現させてやると闘志が湧いて来る様なデザインを描かなければ、デザインチームの信頼が失脚するという危機感は常にある。お互いのチームがそれぞれの予想を超えて、高めあっていけるからこそ、いいモノづくりが出来るんだとか。

例えばニットのプルオーバーの製作秘話も面白い。「ベーコンの絵では、人の表情や身体のシルエットをあえて歪めて湾曲させているものが多いのですが、このニットのプルオーバーはまさにそこからの着想。袖付けのラインを肩甲骨の部分まで大きくとり、 素材をシフォンに切りかえることで美しいシルエットを表現しました」。他にも、ベーコンが描いた生命体が丸みのある袖のニットドレスになったというから驚き。

「これはビスポークテーラーがジャケットやコートで使うMOON社の上質なツイード素材を使用したドレスコート。もちろん裏地はついているけれど、パターンはドレスのものをベースに、肩周りも柔らかく、裾もギャザリングで丸みを帯びさせています。
本来ならシルクなど柔らかい素材で作るものを、あえてカチッとしたツイードで作るフェティッシュさ。そこに狂気とエレガンスのバランスがあるような気がしています」。

アウトプットは大変。
でもインプットはもっと大変。

テーマとしたい題材は常に4、5個あり、その中から次のシーズンに合うものを選ぶという。「よくデザインが枯渇したり、行き詰まったりしないのかと聞かれるのですが、僕自身の中から出てくるものだけなら、出し切ったらそれは枯渇する。
でもそれってインプットが足りてないってことなんだと思います。インプットがないから、アウトプットがない。浮かばなければ探せばいいんです」。

その一方で、ただ単純にそのシーズンのデザインを出すだけでは続いていかないと語るナカアキラさん。「同じものを見て、どう感じるか。そのフィルターにも純度が必要なので、そこにもインプットを続けなければならない。 日々のいろいろなことに興味を向けるのももちろんですが、アートや建築を見に行ったり、読書もよくします」。最近のおすすめは、慶應義塾大学SFC教授、yahooのCSOの安宅和人さんの著書『シン・ニホン』や『イシューからはじめよ』や、 独立研究者、パブリックスピーカーの山口周さんの『NEW TYPE』とか。「僕はファッションデザイナーって、ただ服をデザインするだけでなく、服を通じて社会に提案を投げかけることだって思っています。 〝今の社会に起きているこういう現象についてどう思う?〟って」。

父親から受け継いだもの。
子供に受け継ぎたいもの。

ツイッターなどでは時折、父親としての顔も覗かせているが、聞けば週末は父親業に奔走しているんだとか。「うちの妻は、僕が仕事で忙しくても、それは僕個人の責任であって、父親業をサボることを許さないタイプなので(笑)」。
父親というものについても聞いてみると、ストイックな仕事への姿勢は、自分の父親からの影響も大きいのではないかと語るナカアキラさん。「父は14歳の時に丁稚奉公で魚屋に。 やがて自分の店を構えますが、当時の魚屋としてはアバンギャルドなタイプだったので、いろいろと試行錯誤をして、最終的には結構成功した方だと思います。個人商店で1日の来客数が200人ってすごいですよね。常に向上心を持ち、仕事へのひたむきな姿勢は学ぶべきものがあったなって」。

一方で鮮魚店は肉体労働的なところも多いので、子供ながらに休ませてあげたいと思っていたとか。「きっと僕の子供達は、僕を休ませてあげたいとは思っていない気がしますね。
アトリエにもよく遊びに来ますが、どんだけ仕事が好きなんだってよく言われます(笑)」。自分の子供に対しては特にこうなって欲しいとかは思っていないけれど、〝仕事って楽しいんだ〟ってことが伝わればいいなと思っているそう。

趣味はジョギング。
好物はスイーツ。
リアルな感覚を大切に。

プライベートについてさらに聞いてみると、趣味はジョギングなんだそう。「友人と会うと、つい服を見に行ってしまったりするので(笑)。黙々と走っている時は、頭の中が空っぽになって色々なことがリセットできます。何も考えない時間が大切ですよね」。
他にもスイーツが大好きで、グラニースミスのアップルパイにハマり中なんだとか。「新しく出来たケーキ屋を見かけると、素通りできないんです」。デザイナーは決して特別な存在ではないと語るナカアキラさんの、まさにデザイナー以外の顔を垣間見れた今回。「服作りはあくまでリアルが大事。ファッションはあくまで社会生活の中にあるものだから、そういう普通の感覚はこれからも大切にしていきたいと思っています」。まさに過渡期と言われる今の時代、AKIRANAKAのこれからの躍進がますます気になります。

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STAFF

Text by YUKIKO TSUKADA